「きぼうくん」と「わがままちゃん」──ふたりの心にひとつの灯り【今日のひとこと物語ケア・番外編】

今回はいつも『ひとことケアの番外編』、「きぼうくん」と「わがままちゃん」の物語です。
ある日、心の中で、「きぼうくん」と「わがままちゃん」が話をしていました。ふたりは、誰の心にも住んでいる小さな友だち。ときどきすれ違いながらも、同じ空を見上げています。
目次
「きぼうくん」と「わがままちゃん」
心の町の広場で、わがままちゃんは足を止めて言いました。
「ねぇ、きぼうくん。私のこと、みんな“わがまま”って言うの。」
きぼうくんは、ランプの芯を整えながら答えました。
「そうかな? 君がいなかったら、みんなは“こうしたい”って気持ちを思い出せないよ。」
「でもね、私が何か言うたびに、“人に迷惑をかけるといけないよ”って言われるのよ。」
きぼうくんは、にこりと笑いました。
「それはね、みんなが優しいからなんだ。
誰かに迷惑をかけたくないって思うのは、思いやりの裏返しなんだよ。」
夜になりました。
ふたりは星空の下を歩いていました。
きぼうくんのランプが、ふわりと淡く光ります。
「でもね、わがままちゃん。
君の声の中にも、ちゃんと“希望のたね”が隠れているんだよ。」
「外に出たい」「あの味をもう一度」「家に帰りたい」。
それは“誰かを困らせたい”んじゃなくて、
“まだ生きたい”“まだ感じたい”という心の叫びなんだ。
わがままちゃんは、そっとランプの灯りを見つめました。
「でも、私ね、時々、暴走しちゃうの。
“どうしてやってくれないの?”って……心の中で何度も言ってるの。
ほんとは、“やってほしい”って言えなかっただけなのに。」
きぼうくんは、じっと見つめて微笑みました。
「それはね、わがままちゃんが、自分のコントローラーを誰かに渡しちゃった時なんだ。
“あの人が動いてくれたら、私は安心できるのに”って思うと、
ゲームのキャラクターみたいに、自分では動けなくなっちゃうんだよ。」
わがままちゃんは、目を丸くしました。
「……じゃあ、私、自分のコントローラーを手放してたんだ。」
「うん。でもね、取り戻せばいいんだよ。」
きぼうくんは、自分のランプをそっと差し出しました。
「希望って、“自分のキャラクターを自分の手で動かす力”なんだ。
うまくいかない時があっても、自分の手でボタンを押せるってことが、
もう立派な“生きる力”なんだよ。」
そのとき、夜空の向こうから、小さな声が聞こえました。
「わがまま言ってごめんなさい……。家に帰りたいの。」
ふたりは顔を見合わせました。
「聞こえた? 今の言葉、ちゃんと希望になってるよ。」
「ほんとだ……“帰りたい”は、安心したいってことなんだね。」
ふたりはそっと手をつなぎました。
きぼうくんのランプと、わがままちゃんのハートが重なって、
やわらかい光が広がります。
それはまるで、
わがままと希望がいっしょに息をしているようでした。
夜風が通り抜けます。
心の中の町のあちこちで、小さな灯りがともりました。
「ねぇ、わがままちゃん。きっと僕たち、ひとりじゃ灯せない光なんだね。」
「うん。ふたりの心に、ひとつの灯り。
それが“生きる”ってことかもしれないね。」

ケアのこころノート
〜“わがまま”の奥にある希望を聴く〜
この物語のふたりが教えてくれるのは、
「わがまま」と「希望」は遠いものではなく、
心の矢印の向きが少し違うだけということです。
心理学者スナイダー博士は、希望を「2つの力」で説明しています。
ひとつは、自分で進もうとする力。
もうひとつは、道を見つける力。
きぼうくんは、この“ふたつの灯り”を持っている子です。
どんなに暗い夜でも、「どうありたいか」を忘れなければ、
その灯りは消えません。
わがままちゃんは、
“人に何かをしてほしい”という気持ちを抱えています。
それは、ときに自己中心に見えるけれど、
その奥には「気づいてほしい」「わかってほしい」という
心のSOSが隠れています。
ケアの現場では、この“わがまま”が
生きる意欲のサインであることも多いのです。
人は誰でも、心の中に自分だけのコントローラーを持っています。
希望を持つとき、人はそのコントローラーで自分を動かします。
けれど、ときに誰かにそれを渡してしまうこともあります。
「あなたが動いてくれたら安心するのに」
「誰かが押してくれないと、前に進めない」
そんなとき、私たちは自分のキャラクターを動かす力を
ほんの少し忘れてしまっているだけ。
希望は、うまく動けなくても、
“ボタンを自分で押そう”と思える心の動きです。
「帰りたい」「食べたい」「もう少しここにいたい」。
そんな言葉を“要求”として切り捨てず、
「この言葉の奥には、どんな気持ちがあるんだろう」と耳を澄ますこと。
その瞬間に、支援者はその人の中にある“灯り”を見つけます。
希望は、誰かが叶えるものではなく、
誰かと共有されることで灯るもの。
それが、「ふたりの心にひとつの灯り」という意味なのです。
🏠オハナな縁側から、ひとこと
“わがまま”は、心がまだ生きている証。
“希望”は、その心が未来を見つめている証。
人が生きるということは、
このふたつの灯りを、
ときに揺らしながらも、消さずに抱えていくこと。
今夜も、どこかの心の町で、きぼうくんとわがままちゃんが
静かに灯りをともし続けています。
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『今日のひとことケア』とは?

忙しさや不安、さみしさを感じる日常の中で、
ふと心に寄り添ってくれるような、
あたたかくて、やわらかい言葉があります。
『今日のひとことケア』は、
出会った温かい言葉たちを届けるシリーズです。
体のケアと同じくらい、心のケアも大切に。
小さなひとことが、あなたの一日をやさしく包み、
ふっと息をつける時間となりますように。
誰かに届けたい「やさしいひとこと」はありますか?
あなたが出会った「心がふっと軽くなった言葉」、
誰かに届けたい「やさしいひとこと」はありますか?
『今日のひとことケア』では、
皆さんの「心を癒す言葉」「大切にしている一言」を募集しています。
・自分を励ました言葉
・誰かにかけてもらってうれしかった一言
・暮らしの中でふと思い浮かんだフレーズ など
投稿はコメントやDMでお気軽に。
あなたの言葉が、誰かの今日を支える力になります。
まとめ
バーチャルシェアハウス オハナなおうちは、みんなの居場所です。今日も楽しい時間をありがとうございました。会えてうれしかったです。いつでも寄ってくださいね。
リビングルームにはコメント欄がありますので、あなたの大切にしたいやさしいひとことをぜひ教えて下さいね。
お気をつけてお帰り下さいね。また、お待ちしてます。

