おうちナースな7DAYS|オハナな管理人日誌weekly【2025.5.13〜 5.27】

Instagramで投稿中のオハナなおうちの『オハナな管理日誌』のweeklyバージョンです。ダイジェストというより、リライトや加筆をしていることが多いかもです笑。管理人のバイアスが100%かかっておりますが、在宅看護の枝葉としての読みものとして楽しんで頂けたら幸いです。
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ことばにしてみた訪問看護の看取り⑧

管理人日誌professional Ver. 忙しい妹たちへの解説
【ことばにしてみた訪問看護の看取り】鈴木沙織著 医学書院
看取る〜ご家族の意向に沿って
🏠 死亡診断《オハナな管理人日誌 2025.5.13》
ご家族から連絡をいただき、訪問診療医に連絡し死亡診断を受けますが、看取りの対応体制は医療機関やケースによって、少し異なります。多くはファーストコールで訪問看護師がお伺いし、死の三徴候を確認したのちに、主治医(または訪問診療機関のオンコール)に連絡します。現訪問看護のシステム上の関係で、先に訪問看護師が訪問したのちに、医師が訪問し診断した時間を死亡時間とすることが私たちの地域では多いパターンです。グリーフケアの一つとして家族が息を引き取った時間を大切にしたいと考える医師が、この訪問看護システムについて意見書を提出したとSNSで報告されていました。
近年、多死社会・在宅医不足・在宅や施設での看取りの増加などの社会情勢の変化に伴い、医師による遠隔での死亡診断をサポートための訪問看護師による死亡確認制度が認められるようになっています。医師がすぐに駆けつけられない場合に、研修を受けた看護師が死亡の三兆候を確認し、その情報をICTで医師に伝えることで、医師が遠隔で死亡診断を行う仕組みです。これにより、在宅での看取りがよりスムーズに行えるようになりつつありますが、死亡診断書の発行はあくまで医師の役割であることは変わりありません。
個人的には在宅ホスピスケアを担ってきたチームで最期のお見送りしたいですね。今日まで過ごしてきた家族が看取りをされたことをどう捉えているのか、死亡診断の後に振り返りとして訪ねて下さる医師がいらっしゃいます。不眠不休で必死にそばでお世話をしてくださった遺族の方に労いの言葉を伝えて下さることはどんなに救われることでしょう。そして在宅でのエピソードを色々と思い出しながらお話できることは、私たち医療者にとっても癒しになります。ご家族の思いは、自分たちのケアに対する答え合わせのひとつです。グリーフケアとして大切にしたい時間を、遠隔での死亡診断や狭義の死亡診断のみで終わってしまうのは、とても残念に感じてしまいます。
在宅でのエピソードを色々と思い出しながらお話できることは、私たち医療者にとっても癒しになります。
🏠 エンゼルケア《オハナな管理人日誌 2025.5.14》
エンゼルケアとは、亡くなった方の身体に対して行う死後の処置全般を指します。主な内容は、身体を清潔に保ち、死化粧(エンゼルメイク)や着替えを施し、見た目を整えることです。これにより、故人が生前の面影を保ち、穏やかな表情でお別れできるようにします。
死亡診断が終わり、悲しみから少し落ち着いたタイミングで、エンゼルケアについて説明をします。エンゼルケアは保険適応外ですので、それぞれの事業所が設定している料金になります。訪問看護では1〜2万円が多いです。
エンゼルケアの具体的な内容
- 医療器具(点滴やチューブなど)の取り外し
- 傷跡や体液の処置
- 洗髪・整髪
- 全身の清拭と保湿
- 死化粧(エンゼルメイク)
- 着替え(故人や家族が希望する衣服に着替えさせる)
- 体勢を整える(合掌や顔に白布をかけるなど)
【エンゼルケアを行う目的と効果】
1. ご遺体をきれいに整え、故人の尊厳を守る:生前の面影を保つことで、故人の尊厳を守り、穏やかな姿でお別れができるようにします。
2. 遺族のグリーフケア(悲嘆ケア):故人をきれいに整えることで、遺族が「きちんと最後までケアしてあげられた」「きれいな姿でお別れできた」と感じ、満足感や達成感を得られます。遺族自身が一部のケアに参加することで、死を受け入れるきっかけとなり、悲しみの受容や心の整理(グリーフケア)につながります。
3. 感染症予防と衛生管理:死後、体液や排出物が漏れ出すことによる感染症リスクを防ぐため、適切な処置を行います。
エンゼルケアは、単なる死後の身体処置にとどまらず、故人の尊厳を守り、遺族の心のケア(グリーフケア)や感染症予防など、多面的な効果を持つ大切なケアです。
🏠 エンゼルケアの始まり《オハナな管理人日誌 2025.5.20》
古来より日本では亡くなった方の身体を清め、整える「湯灌」などの死後処置が家族や近親者によって行われてきました。これには綿を詰める、身体を洗うなどの行為が含まれ、感染予防や魔除けなど民俗学的風習の意味がありました。今でも名残りあり、野辺送りが一般的な地方もあります。
近代になると、病院で亡くなる人が増え、死後処置は医療従事者が行う「死後処置」「ステルベン」と呼ばれるようになりましたが、ホスピスや緩和ケアの普及とともに、死を穏やかに受け入れるケアが重視されるようになり、「エンゼルケア」という言葉が使われ始めました。私が入職して先輩におそわったのはまさにステルベンでした。「エンゼルケア」の語源は「エンゼル(天使)」に由来し、故人が天使のように安らかな姿で旅立つことを願う意味が込められています。宗教的な発想からではなく、「死後処置」などの言葉に比べて悲壮感が少なく、優しさや思いやり、穏やかさをイメージさせる言葉として選ばれました。ご家族と一緒にケアをすることも多い在宅看取りでは、遺族の悲しみを和らげ、故人の尊厳を守るためのケアとして広まっています。
🏠 Our’s エンゼルケア《オハナな管理人日誌 2025.5.22→24》
この書籍においてエンゼルケアで大切にされていることは、私も同じように感じながらお手伝いをさせて頂いていました。ご縁をいただき、今日まで私たちを受け入れてお手伝いさせて頂けたこと、感謝の気持ちで旅立ちのお手伝いをしたいと願います。
しばしのお別れの時間のあと、ご遺族とご相談して、エンゼルケアをお手伝いします。お亡くなりになったとしても、私たちにとっても大切な存在ですのであることは変わりません。ケアはいつも通りにお声をかけて当然のようにお手伝いをさせて頂いていると、遺族の方に名前を呼びながら横向きますよ〜、拭きますね〜とケアしていることに感激されたという言葉がありました。たしかに以前身内の臨終の際の納棺師による湯灌は、静粛の中、凛として無駄な動きや粗相なく執り行っていることを思い出しました。湯灌とエンゼルケアとでは、意味合いが違うように感じます。エンゼルケアでは、たとえ故人になったとしても関係性は続いていますし、その方との物語をそれぞれの心の引き出しの中に大切にしまう作業にも感じます。一方で湯灌は専門性が発揮されますが、納棺師と故人との関係、故人と遺族との関係、民族文化的な意味合いとしての線引きが重んじられます。エンゼルケアでは、ご家族の様子を見ながら一緒に体を拭くことをお誘いします。ご家族が丁寧に拭いて下さる姿は、心に沁みます。
本書でもありますが、血流がなくなった皮膚は損傷しやすいため、整容のケアは保清と保湿、そして冷却がとても重要になります。特に剃刀を使う髭剃りは革皮様化現象をおこしやすいので、お亡くなりが近くなりそうな状況となれば、密かにタイミングを見計らい、亡くなる前にサッパリとして頂けるように配慮します。どうしても髭剃りをする場合は、①電気カミソリで横にスライドせずに皮膚に垂直にあてながらひげを剃り、②剃刀の場合は、剃る前に蒸しタオルで温める、シェービングクリームや石鹸をしっかり塗る、剃った後は保湿クリームを塗る乾燥を防ぐために皮膜や被覆を行うことで、革皮様化の発生を最小限に抑えることができます
革皮様化(かくひようか)現象
ご遺体の皮膚が乾燥し、表皮(肌の一番外側の層)が剥がれ落ちてしまうことで、真皮(内側の柔らかい皮膚)がむき出しになり、水分がどんどん失われていく現象。その結果、皮膚が縮み、まるで革のように硬く、暗褐色に変化する状態を指します特に、死後処置(エンゼルケア)で髭剃りを行った際に、剃刀で表皮まで削ってしまうと、その部分が乾燥して革皮様化しやすくなる。唇や顎の下など、乾燥しやすい部位でよく見られる。
お身体をきれいにするのは生前と同様ですが、絶対に傷をつけないように無理なケアはしません。医療的器具や管を外して汚れない工夫をします。死後硬直が進む前に義歯を装着し、生前と同じように、口腔ケア、清拭、可能でしたら洗髪はすることが多いです。洗髪をすると頭皮が緩み、表情がびっくりするほど穏やかになります。開眼していたら工夫をし、閉口するようにクッションやタオルでポジションニングし、お身体に傷をつけない細心の注意を払います。顎の関節を固定するのに顎バンドという商品がありますが、きつい圧迫になってしまうとバンド痕が出血斑のようにフェイスラインにできてしまうことがあるので使用しません。口が緩やかに開いている状況は意外と笑っているような印象もあり、私の仲間はその様子から「まだ皆さんとお話が足りなかったのですね」とお声をかけるので場の癒しになった経験もあります。
排泄や体液漏出で後から困ったことにならないためにもしっかりと対応します。全ての方に共通するのが冷却です。さすがにここでは具体的な例を出すのは避けますが、できるだけ早く葬儀業者に連絡し冷却対応をしてもらうことをお勧めします。とても大切な心配りですので、ここは専門職として、しっかりと知識と技術を学ぶことが大切に感じます。
エンディングノートで最期の衣服をご家族に託していらっしゃることもありますが、多くの方はそこまでしっかりと終活されている方がそう多くはありません。闘病で必死な状況が続いている最中に最期にどうしたいという意思表明できる方はかなり気丈な方だと感じます。しかし、その方が在宅看取りまでの過ごす自然な流れで旅立つ時に服装についてお話ができるタイミングがあれば、お聞きしますし、危篤状態になりご家族に余裕がありそうでしたら、亡くなった時の対応や連絡方法についてお話する際に話題を広げて、服装についても考えていただくようにお伝えします。
今朝まさにお看取りでした。せっかちさんの性格通りの旅立ちで、私たち医療者自身も心の準備も間に合わずにというエンディングでしたので、ご家族にとってはなおさらのことでした。エンゼルケアの基本はあっても、その方々の個性が彩られます。たった今旅立った故人が喜ばれるように思いやりのケアをと、ごく自然に身体が動きます。「いよいよの時には腹一杯お酒を飲みたい」残念ながら叶えられないかった、せめても思いで口腔ケア後に日本酒を味わっていただきました。
🏠 最後のご挨拶とお参り訪問(グリーフケア)《オハナな管理人日誌 2025.5.27》
自宅でご逝去されると、訪問医の主治医が死亡診断し、死亡診断書を発行します。火葬の手続きや保険の請求や名義変更、口座の解約などの際にも死亡診断書は必要なのですが、死亡届を役所に提出すると返却されません。手続きの数にも関係しますが、一般的に10枚程度コピーが必要だと言われています。エンゼルケアを終えて、なるべく早くご遺体を冷却することが大切なので葬儀社に連絡していただくことをおすすめします。何かの都合で連絡が遅くなる場合や室温が高いとき、ご遺体が傷みやすい病状であった場合は、ご自宅にある保冷剤や氷枕で腹部や胸部を冷やします。ご遺体を安置するためや訪問客のスペースを確保するために、ご家族の都合にあわせてベッドなど福祉用具を引き上げてもらうように業者に連絡をします。処方されたお薬、特にオピオイドや点滴液などは、訪問薬剤師に引き上げの連絡をするか、これから葬儀などで忙しくなるご家族に代わって、薬局に返却することもあります。
物品を片付け、すべてが終わると、ご本人、ご家族に挨拶をして後にします。帰る前に、利用料金の請求の時期と方法についてご説明をします。できれば集金をきっかけにグリーフケア訪問のお約束をします。
最後の訪問から久しぶりの再会となるお参り訪問では、私たち自身もタイムリープしたような気分がしますが、祭壇のご遺影の中のご本人に手を合わせると現実に引き戻されます。ご遺族とお話できることはとても大切な時間であり、率直に感じていることをお話いただくことが、私たちのケアとの答え合わせにもなります。ご家族と大切な人の看取りまで共有できた日々を振り返り気持ちを表出し、お互いのグリーフケア(悲嘆のケア)としての癒しにつながります。今後のケアに活かすヒントを与えてくださったり、これからもお手伝いを続ける勇気や原動力にもなります。さらに関わってくださった多職種へのフィードバック、そして、これからの在宅看取りのために何か役に立てたらとSNSで発信しています。
まとめ
医学書院 鈴木沙織著『ことばにしてみた訪問看護の看取り』の著書は、看護師が在宅看取りケアで大切にしているマインドがたくさん詰め込まれています。とてもわかりやすく大切なポイントをギュッと厳選している内容です。この本を読み進めながら、自分が普段関わっている上で言葉していなかったことに気付かされ、もっと意識的に大切にし続けたいと思えました。可愛い妹たちへはもちろんですが(笑)、SNSで奇跡的に出会い共感して下さる方々(おこがましいな~汗)、自分の覚書として書き綴ってみました。そして書き綴り終えて気がついたことは、すべての看護ケアは患者さん(利用者さん)や家族さんと共に作り上げていくことだということです。私たちはまるでたくさんのワインを知っているソムリエのように専門知識を磨いていきながらも、お客さんの要望に応えてワインを選ぶ手助けをするが如くに、患者さん(利用者さん)を知りニーズをキャッチし、患者さん自身が選択する手助けをすることで、その方が最後まで物語を綴っていくことをお手伝いするという大切な役割を忘れてはいけないということです。パターナリズムともいいますが、このワインはあなたにぴったりなのでこれにしましょうでは押し付けになってしまいます。私たちがたくさんのワインに迷ってしまい選べないのと同様に、在宅看取りケアもどうしていいのかと選べないのは当然です。そのことを理解しながら会話を重ね、いのちの物語を完成するお手伝いをしたいという支援者のマインドがやはり大切なのだと信じています。そして人は最期まで、いや次の世界に旅立ったとしても、誰かの支えとなるかけがえのない存在なのだと改めて言葉にしたいと思います。
個人の感想にお付き合い頂きありがとうございました。種が芽吹く日を夢見て。
バーチャルシェアハウス オハナなおうちは、みんなの居場所です。今日も楽しい時間をありがとうございました。会えてうれしかったです。いつでも寄ってくださいね。リビングルームにはコメント欄がありますので、何かリアクションしていただけたら励みになります。お気をつけてお帰り下さいね。また、お待ちしてます。