ホーム > 管理人室 > 割れてしまったら、笑って食べちゃおう|縁日の型抜きが教えてくれたこと【管理人日誌】

割れてしまったら、笑って食べちゃおう|縁日の型抜きが教えてくれたこと【管理人日誌】

記事内に広告が含まれています。

お祭りの、すこし外れた屋台の片隅。
小さな板を前に、一言もしゃべらず、黙々と針を動かしている子どもたちの背中。

昭和や平成を通り抜けてきた人のなつかしい光景。
令和の若い子には、知らない世界かな?

型抜き(カタヌキ)の屋台

うすい板に、星や犬や、桜の花の形が浮き彫りになっていて。
それを、針の先で、割らないように、そうっと抜いていく。
うまく抜けたら、景品がもらえる——子どもにとっての、人生でいちばん最初の「真剣勝負」みたいな遊びです。

食べられる、おもちゃ

型抜きは、でんぷんやお砂糖でできた、食べられるお菓子です。
昔は「あんまりおいしくない」なんて言われた時期もあったそうですが、今はラムネ味やぶどう味があって、抜いたあとに、ちゃんと味わえる。

遊んで、食べる。
ひとつで、ふたつ楽しめる。

調べてみたら、いまこの型抜きを作っているのは、大阪のとあるまちにある一軒だけ、なのだとか。
紙芝居屋さんが子どもを集めるための、目玉だった時代もあったそうです。
材料を混ぜるところ以外は、ほとんどが手作業。
あの一枚の薄さに、ずいぶんとたくさんの手間と時間がかかっている、と知って、ちょっと見る目が変わりました。

ありふれた、縁日の駄菓子。
でも、ありふれているものほど、よく見ると奥が深かったりします。

上手な子は、力で割らない

成功率は、コツを知らないと数パーセントなのだそうです。
でも、慣れた子は、ちがう。
そこには、力まかせじゃない、ちいさな知恵があります。

  • いきなり、芯を突かない。
     いちばん細いところを最初に攻めると、逃げ場をなくして、ピシッといく。
  • 逃げ道を、自分で作っておく。
     むずかしい形のまわりに、先に浅い溝を掘って、形をやさしくしてから抜く。
  • 切るんじゃなくて、削る。
     針を立てて刺すんじゃなく、ヤスリみたいに、すこしずつ。

——これ、なんだか、暮らしに似ていませんか。

いちばん痛いところを、いきなり突かない。
逃げ道を、先に作っておく。
一気にやろうとせず、すこしずつ、削る。

わたしがつくろうとしている家のことを、つい、重ねてしまいました。
完璧に便利にしない。余白を残しておく。だれかの手が入る溝を、わざと掘っておく。

それでも、割れるときは割れる

でも。
どんなに慎重にやっても、型抜きは、ある時とつぜん、理不尽に割れます。

うまくいっていたのに。あと、ひと削りだったのに。
目に見えない「割れぐせ」や、ほんのちょっとの油断で、パキッと。

ああ、人生みたいだなあ、と思います。
準備して、気をつけて、それでも割れる日がある。

割れても、食べればいい

でもね。
ここからが、型抜きの、いちばんやさしいところ。

割れても、食べられるんです。

景品はもらえなかった、欠けた桜の花びら。
形にならなかった、家の屋根のかけら。
それでも口に入れたら、ちゃんと、甘い。

完璧に抜けたら、景品。
割れても、おやつ。
どっちに転んでも、ちゃんと、手のなかに甘いものが残る。

——これって、わたしがつくりたい暮らしの、いちばん芯にあるものだなあ、と思うのです。

完璧じゃなくていい。
失敗を、失敗のままで終わらせない。
割れたかけらを、笑って、はんぶんこして、食べてしまえばいい。

「もう一回!」と新しい板に向かう子どもみたいに、わたしたちは、また次の一日をはじめます。
割れるかもしれない、と知りながら。
それでも、理想の形を、すこしずつ削っていく。

そのプロセスの、ぜんぶが——たぶん、しあわせなんだと思います。

オハナな縁側から、ひとこと

今度の縁日で、型抜きを見かけたら。
うまく抜けても、割れても、どっちでもいいから、やってみてください。

割れたら、食べちゃいましょう。
それはたぶん、失敗じゃなくて、いちばん甘いところ です。

今日もお会いできて光栄です。是非またお会いできることを心待ちにしています。またここでお会いしましょう。

シェアする