【そっとケアQ #9】ユマニチュード®とは?“人間らしさを取り戻す”ケア──4つの柱と5つのステップで変わる関わり方

目次
ユマニチュード®(Humanitude)とは
介護や看護の現場で「ユマニチュード」という言葉を耳にしたことはありますか?
フランス生まれのケア技法ユマニチュード®(Humanitude)は、
「人間らしさを取り戻す」という意味を持つフランス語の造語です。
考案したのは体育学者のイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏。
この技法は、認知症ケアを必要とする方だけでなく、
介護をする人・される人の両方が、
おたがいの人間らしさを大切にできる関係性を築くために生まれました。
【そっとケアQ・第9問】Q. ユマニチュード®という言葉の意味は?
A. 新しい介護のマニュアル
B. 認知症治療のための薬の名前
C. “人間らしさを取り戻す”という意味の造語
✅ 正解は… C!
ユマニチュード®とは?
「Human(人間)」+「Attitude(態度)」= Humanitude(ユマニチュード)。
つまり、人としての姿勢・関わり方そのものを表します。
ユマニチュードは、介護技術というより「生き方の哲学」に近いもの。
「ケアをする人」と「ケアを受ける人」が、おたがいに“人として向き合う”ことを大切にする考え方です。
ユマニチュード®の構成:4つの柱と5つのステップ
4つの柱──「あなたは大切な人です」を伝える技術
1️⃣ 見る(まなざしを合わせる)
正面から同じ目線で見つめることで、「あなたを尊重しています」というサインを送ります。
見下ろしたり、無視したりすることは“否定のメッセージ”になりやすいのです。
2️⃣ 話す(声をかける)
低く穏やかな声で、優しい言葉を。
無言の時間は「あなたは存在しない」と伝わりやすいため、
「これからタオルで拭きますね」など、ケアの流れを言葉にする“実況”が大切です。
3️⃣ 触れる(そっとふれる)
手のひら全体でゆっくり触れると、安心感を与えます。
敏感な部分からではなく、背中や肩など鈍感な部分から始めましょう。
4️⃣ 立つ(立位を保つ)
立つことは“人間らしさ”の象徴。
1日20分を目安に立つ時間を設けることで、
寝たきりの予防や心の活性化にもつながります。
🪞ポイント:
これらの柱は、ひとつだけではなく2つ以上を組み合わせて行うことで、
より強い信頼と安心を生み出します。
5つのステップ──ケアを「物語」にする流れ
ユマニチュードでは、ケアを一連の“物語”として進めるための5つのステップがあります。
それは、ただお世話をするのではなく、
「出会い」から「再会」までの人間的な関係性をデザインすること。
1️⃣ 出会いの準備
部屋に入る前に、ドアを3回ノックして3秒待つ。
相手の脳が「誰かが来る」と認識し、心の準備が整います。
2️⃣ ケアの準備
「〇〇さんに会いに来ました」と伝え、同意を得てからケアを始めます。
この合意形成が、拒否や不安を減らす第一歩です。
3️⃣ 知覚の連結
ケアの最中は「見る・話す・触れる・立つ」の柱から2つ以上を組み合わせ、
言葉と行動が一致するメッセージを届けます。
4️⃣ 感情の固定
ケア後に「気持ちよかったですね」と声をかけ、
快の感情を記憶として残します。
認知症の方は“出来事”を忘れても、“心地よさ”は記憶に残るのです。
5️⃣ 再会の約束
「また明日お会いしましょう」と伝えることで、
「優しい人にまた会える」という安心と期待が生まれます。
ユマニチュード®の効果
国内外の実践研究では、以下のような変化が報告されています。
- 認知症の方の暴言・拒否・興奮(BPSD)の軽減
- 笑顔や発語が増えるなど、感情表現の改善
- ケアを受ける側と行う側の信頼関係が強化
- ケアスタッフのストレス軽減・離職防止
- 寝たきり予防・自立支援への効果
「やさしさ」は“効果”としても、しっかり現れるのです。
今日からできる、ちいさなユマニチュード®
- 顔を見て「おはよう」と声をかける。
- ケアを始める前に「これから〇〇しますね」と伝える。
- ケアの後に「ありがとう」「また会いましょう」と微笑む。
それだけで、日常の中に“人間らしさ”が戻ってきます。
🦉おうる先生のやさしい解説
「ユマニチュードはのう、“やさしさを伝える方法”なんじゃ。
ケアを受ける人の尊厳を守るだけじゃなく、
ケアをするおまえさんの心もやわらかくしてくれるんじゃよ。」
「思いやりは、特別な技術じゃなく、日々のふれあいの中にあります。
“人として向き合う”こと──それが、ユマニチュードの原点です。」
📖 参考・出典
- 『ユマニチュード入門』(イヴ・ジネスト/ロゼット・マレスコッティ著)
- GINÉSTET Humanitude Japan株式会社 公式サイト
- 国立長寿医療研究センター「ユマニチュード実践事例」
- 厚生労働省「高齢者の尊厳を支えるケア技法」紹介資料
🌙 次回予告*そっとケアQ|第10回
「まなざしが伝える“あなたは大切な人”」
ユマニチュード®の第一の柱「見る」の技術を、
日常のケアに活かすヒントをお届けします。
🌱みんなでつくる「そっとケアQ」
介護や在宅医療のなかで、
「これって、どうすればいいの?」と迷うことはありませんか?
誰かの“困った”や“気づき”が、
きっと別の誰かの支えになります。
オハナなおうちでは、みなさんからの在宅ケアや介護にまつわる疑問を募集しています。
日常の小さな「?」を、クイズ形式で一緒に学ぶ「そっとケアQ」に取り上げていきます。
💬 たとえば…
- 介護保険の使い方がわからない
- 認知症の方の言葉にどう返せばいい?
- 看取りの時、家族は何を意識すればいい?
小さな気づきでも大丈夫です。
あなたの声が、次の「そっとケアQ」をつくっていきます。
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