🏠育まれるからこそ、オハナなおうち【オハナな管理人日誌】

このシェアハウスの鍵を受け取ってから、3か月半が過ぎました。おかげさまで徐々に準備が整ってきていて、シェアハウス開きまで、もう間もなくとなりました。
その前に、いちどだけ、ふりかえっておきたくなりました。築46年の古い一軒家に出会い、「オハナなおうち」になるまでの話です。
出会ってしまった
はじまりは、4月でした。あの日、鍵を受け取ったときのことは、前に書きました。
正直にいうと、この家は「探して見つけた」というより、「出会ってしまった」に近いのです。築46年。その割にはきれいで、大切にされてきたおうちだと、一目で分かりました。玄関に立った瞬間、ここだ、と思ってしまった。
あとから家主さんに聞くと、ご自身も、シェアハウスみたいなことをやってみたかったんですって。その想いが、家づてに伝わってくるようでした。奇跡みたいなご縁は、もう繋がっていたのかもしれません。
やりたいことは、決まっていました。人を支える家、ではなくて——古くて、不便で、みんなに助けてもらわないとやっていけない、「支えが必要な家」。完璧じゃない場所にだけ、「ちょっと手を貸して」が生まれると、信じているからです。
とはいえ、このときのわたしは、まだ知りませんでした。その「ちょっと手を貸して」をどう伝えていけば、自然と生まれていくのかを。
最初の「集まさる」は、庭だった

雪が解けたら、庭一面、みごとな雑草でした。
開業準備といっても、なにせ何から始めていいやら。ご近所さんはきれいに春の畑作りに勤しんでいらっしゃるのに、そもそもわたしは、庭いじりの経験がありません。雑草って、どう管理したらいいの? みんなが厄介者にするスギナが、うちの庭ですくすく育っていく。
ネットとAIを駆使して、できない自分を面白がって、SNSへ。訪問先では、お庭づくりの先輩たちがアドバイスをくれました。そして——SOSを出さなくとも、面白そうなにおいに誘われて、ひとりふたりと、庭に人がやってきてくれたんです。
みんな、時間を見つけては、自分で担当の場所を決めて、好きなだけ手入れして、帰っていく。わたしも、時にはガーデナークロコを召喚したり。ばらばらもいいところです。
そのそれぞれが、好きな時に、思い描きながら庭を整えていく。それがとても心地よくて。きれいに整えることだけが、目的じゃないから。誰かが土をいじって、誰かがそれを見ている。もう、それで足りている。
あたたかい応援が、背中を押してくれる

家の中では、リフォームが進んでいました。そして並行して、この家には、いろんなものが「譲られて」きました。
101号室のベッドは、ゆずりもの。テレビは、1階のぶんも、2階のぶんも来ました。2階の冷蔵庫も、電子レンジも、洗濯機も。どこかのおうちで眠っていたカラーボックスは、この家で目を覚ますことになりました。ダイニングテーブルは、椅子を6脚も連れてきて。2階の共有スペースには、ちょっと一休みするのに最高な、二人がけの黒いソファ。それから、寝具も。
そして娘からは、豆から挽いてくれるコーヒーメーカーが届きました。
譲ってくださる、ということ。それは「応援しているよ」の気持ちなのだと思います。庭のように、直接手を貸してもらうだけじゃない。モノを譲っていただくたびに、その向こうの気持ちにも、支えられていました。
開業前の家に、暮らしの道具が、先に集まってくる。手も、モノも、気持ちも、気づけば、おたがいさま。

業者さんにお願いしたのは、お願いすべきところだけ。限られた資金で家賃に上乗せしたくはなかった。ロールスクリーンは自分たちで付けました。そんな話をすると電動ドリルを貸してくださった方もいて。窓を拭き、床を磨き。「自分たちで、やればできる」は、失敗も含めて笑い飛ばす、SNSの最高のネタに。
誰かの暮らしを引き継いだ、味わい深い家。それを一緒に作り上げていく魅力に、思わず引き寄せられる。これこそ、願っていたしあわせのかたち。
部屋に、顔がついてくる

ドアと壁がついて、部屋がひとつずつ、「誰かの部屋」の顔になっていきました。がらんとした場所が、ここで暮らしが始まるんだと、みんなの場所へと輪郭がついていく。それこそ、この家自体が喜んでくれている、そんな気がして。
そして最後に、キッチンを、IHに替えました。子どもからお年寄りまで、いっしょに安全に台所に立てるように。
キッチンから、賑やかな笑い声と美味しい匂いが漂ってくる。そんな日が待ち遠しい。
育てたのではなく、育まれた

リフォームがぜんぶ終わった日、家じゅうの写真を撮って回りました。空っぽの部屋には、午後の光だけが、先に入居していました。
ふりかえって、気づいたことがあります。
庭も、部屋も、家具も、ぜんぶ、誰かとのつながりの中にありました。ベッドを譲ってくれた人。草をとりに来てくれた人。「これ使って」と声をかけてくれた人。ひとつひとつのモノの向こうに、その人の顔があります。
気がついたら、たくさんの温かいつながりに、育まれている。
わたしが家を育てたんじゃない。この家は、みんなとのつながりに育まれて、できていました。
そして、そのつながりこそが——オハナなおうちが、いちばん大切にしたいものです。
みんなに育まれたからこそ、オハナなおうち。
足りないものは、まだまだあります。でも、この家には、のびしろしか、無い。
もうすぐ、この家をひらきます。

