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笑顔が、ことばより先に届いた日のこと。認知症のある方とのノンバーバルコミュニケーション【オハナな管理人日誌】

認知症じゃなければ気がつけなかった、やさしいキャッチボールがある。
もしかしたら、言葉を越えるつながりなのかもしれません。

「なんだかウロウロしていたんだよな」 その言葉を聞いて、とても驚きました。

認知症が進み、 徘徊していたことが記憶に残っていたなんて。

訪問看護師として関わる中で、徘徊のある方のことを相談されることは少なくありません。夜間せん妄と重なることも多く、施設のスタッフさんやご家族さんが、対応に苦労されることもあります。一晩中、眠れない夜が続くと、それはご本人だけでなく、そばにいる人たちにとっても、ほんとうに大変なこと。「なんとかやめさせよう」という気持ちになるのは、当然のことです。

現場で長く関わってきた実感として、本人には必ずといっていいほど理由があるのですが、気づけないくらい介護には心の余裕はないものです。

家に帰らなきゃ。
買い物に行かなきゃ。
仕事に遅れる。

何かが行動を駆り立てているのでしょう。 だからといって、事実と違うことを 頭ごなしに否定することは、 心を傷つけることにつながりかねません。

不安や混乱を取り除くことは難しくても、せめて安全に配慮しながら その一生懸命さの向こう側へと 穏やかさを取り戻せたら。

しかも、この方には言葉の壁もありました。 質問しても、違う言葉が出てきてしまう。 伝えたいことがあるのはわかる。でも、言葉がうまくつながらない。

言葉で表現ができなくなったことは、何もわからなくなった人ではない。

そこで、発する言葉じゃないコミュニケーション 表情や態度、雰囲気、言葉の輪郭を しっかりと受け止めたいと思いました。

うんうん、と会話を楽しんでいると、ふいに肩のあたりを軽くぽんぽんと叩かれました。笑いながら。

つられて、私も笑っていました。 理由はわからなかったけど、笑っているそのことが、私にハッピーを与えてくれたのです。

言葉が通じなくても、 楽しいという気持ちは、ちゃんと伝わる。

そうか。

先日の研修で出会った言葉です。 「苦痛を減らすことだけを目標にするのではなく、本人・周囲・私たちの笑顔を目指すこと。」 あの笑顔で肩をぽんぽんされた瞬間、穏やかさそのものでした。 緩和ケアに限ったことじゃない。 大切なことを教わりました。

辻褄が合わないと烙印を押すのは、もったいないと感じます。 その方の言葉や行動が「おかしい」のではなくて、私たちの物差しで測ろうとするから、本質に手が届かなくなるからです。 辻褄が合わないことで困るのは誰なのでしょうね。

オハナな縁側から、ひとこと

言葉を失っていく過程で、人は別の何かで語り続けている。肩をぽんぽんされたあの瞬間、私はそれをたしかに受け取りました。おたがいさまって、言葉がなくても成り立つんだな、と思った午後のことでした。

単純に、一緒に過ごす時間が楽しいのです。

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