オハナな管理人日誌weekly 2024.11.7→11.13
Instagramで投稿中のオハナなおうちの『オハナな管理日誌』のweeklyバージョンです。ダイジェストというより、リライトや加筆をしていることが多いかもです笑。管理人のバイアスが100%かかっておりますが、在宅看護の枝葉としての読みものとして楽しんで頂けたら幸いです。
人間工学における「やさしさ」とは
《オハナな管理人日誌 2024.11.7〜11.8》
工学がそれを使う人間にやさしくあらねばならぬという考えは、機能すればよいというレベルからの進歩ではある。その「やさしさ」は、使い易い(簡便)の段階をへて使い手の安全性さらには車の乗り心地のような快適を考慮するようになった。はたして、それが人間工学における本当の「やさしさ」であろうか。「やさしさ」は「優しさ」のレベルに昇華されなければならない。優しさとは単なる心地よさとは異なり、また当然の事ながら便利さとも異なる。実は人類は心地よさと簡便さを追い求める結果、環境汚染を含めた袋小路に入り込んでしまっているのである。また、心地よさを求める人間の欲望が、人類の歴史の争いの大半の源となっている事実も忘れてはいけない。
優しさとは思いやりであり、愛情であると考えてみると、人間工学における物と人の関係も快適さを超えた概念が必要となる。人の優しさは母親から植え付けられ、自分と他のつながりを感じる事によって育まれる。母は愛情というバックボーンで子供を躾る。この躾の語源は、和裁の「仕付け」に由来すると言われている。 すなわち着物に折り目を付ける事が、社会の基本的な約束事を教える事に通じ、共に身を美しくするのである。躾のプロセスは心地よさとは異なる厳しさを伴う。しかしその厳しさは愛情に裏打ちされたものである。人と物の関係も単に心地よさを求め与える関係から、より広いより長期的視点に立った「優しさ」が肝要となる。文明の名の基にテクノロジーがそれを造り出す人間の予想を超える速度で進歩して行く今 、 この「優しさ」の持つ意味をもう一度謙虚に考え直す必要があるのではないだろうか。
元東京女子医科大学名誉教授 仁志田博司著人間工学38巻Supplement号1998年より引用
モノが人に与えるやさしさか…考えたこともなかった発見でした。
たとえ画期的な文明の力であっても、慣れてくると当たり前になってしまうのが世の常でしょう。便利で快適とは思っていても、それが人に与える影響としてのメリットもデメリットも持ち合わせていることだということでしょうね。その人にやさしいモノを作り出すのも求めるのも、生身の人間だということも事実です。やさしいモノが存在価値が人間の私利私欲にまみれているのでしたら、本来の優しさの役割は果たせないと言えるのかもしれません。
親子の愛情のように相手を思いやる、しかも一方的ではなくお互いに関係性を築きつつの『優しさ』の重要性について人間工学の目線からのお話でした。優しさは人間(じんかん)から生じるもので、社会的にも重要なアイテムであることは日常的に感じることができます。だがしかーし、私たちは遺伝子的に利己的な価値観が優位になりやすいことでジレンマに悩まされたことありますよね? そんな揺れる優しさをテクノロジーはどう捉えて進化するのでしょうね。機会があれば、AI人工知能からも考えてみようかな…。
やさしさのタネというネタ①
《オハナな管理人日誌 2024.11.10〜11.13》
オキシトシン love hormone
幸せホルモン=オキシトシンとしてクローズアップされたことがありましたのでどこかで聞いたことがあるの方も多いことでしょう。誰しも自分の身体のお話しですので、雑学として面白がってみましょうか。
『放るもん』じゃない方のホルモンの話です。私が看護学生の時に生理学で学んだ時に、人はホルモンに操られているんだなぁ〜と、だから自分をコントロールできなくても当たり前と怠惰な自分への都合の良い言い訳にしていたことを思い出しました、汗。医学の進歩とともに、現在ホルモンとして確かめられているものだけでも100種類ほどあり、さらに発見され続けられています。そのひとつのオキシトシン。「オキシトシンは進化的に非常に古い分子です」インディアナ大学(米国ブルーミントン)の神経科学者Sue Carterはオキシトシンに関するさまざまな研究を他に先駆けて行ってきて、そう断言されています。「オキシトシンは、現生動物に至る進化の過程でさまざまな目的で使われ、また、再利用されてきました。オキシトシンが社会行動などに及ぼす影響を調べた研究者のほとんどが、何らかの成果を挙げています」とはいっても、哺乳類での作用については依然として謎が多いのです。
幸せホルモンと言われているオキシトシンの物語は1900年代初頭までさかのぼります。脳の下垂体後葉から分泌されるある物質が分娩時の子宮収縮や産後の乳汁分泌を促進させることを、生化学者らが発見したのです。その後この物質の正体であるホルモンが発見され、ギリシャ語の「迅速な出産」を意味する言葉にちなんで「オキシトシン」と名付けられました。オキシトシンは主に脳の視床下部という場所で産生されます。
1970年頃より医学・生化学の進歩とともにオキシトシンも例に漏れず研究で次々と明らかにされました。
⚫︎オキシトシン産生ニューロンが脳の至るところに信号を送っていることが明らかになり、このホルモンが行動の調節に関与していることが示唆される。
⚫︎ラットにオキシトシンを投与すると母性行動が見られた。
⚫︎ハタネズミの脳内でオキシトシンが生涯同じ相手と配偶関係を続ける「つがいの絆」に関わっている
⚫︎線虫でもオキシトシンの一種が配偶相手を探し出して認識するのに役立っている。
目に見えず脳内のオキシトシンを高い精度で測定することは当然ですが難しいことでしょう。しかも正常状態でいつ、どこで、どれくらいの量が放出されるかを正確に知ることが困難だと、当然オキシトシンが脳内で果たす役割についてもつかむことはできません。脳の働きが重要な神経回路の特性を明らかにしようという動きが神経科学分野で高まったことで、オキシトシンが脳内で果たす役割を解明するための不可欠な情報水準の底上げになると期待できます。
一方で2015年4月Natureで発表されたのは、ランゴン医療センターFroemkeらがマウスでの実験において、オキシトシンは入力信号を増幅することで、それらの信号が行動する上で重要だと認識されるようにしている可能性があるというもの。人で言うと一部の母親が赤ちゃんの泣き声を特異的に聞き取れるのは、赤ちゃんの泣き声とオキシトシンの2つが合わさることで、『抑制の覆い』が剥がされ、赤ちゃんの泣き声の刺激が増幅されて伝わることで、重要なこととして認識される仕組みとして説明がつきそうだというのです!
神経科学者Richard Tsienは、オキシトシンが神経回路に及ぼす作用を詳しく研究するために、学習や記憶に関与する海馬という脳領域の切片を調べ、2013年Natureにてオキシトシンが選択的に作用して神経回路内の「背景のおしゃべり」を静かにさせていることを発見し発表しています。え??「オキシトシンは信号の伝達度を向上させ、海馬系内の情報伝達能をほぼ倍増させました」それって、ノイズキャセリング役ということですか!!さらにマウスが他の個体のニオイを認識して注意を払う行動や、人の顔面認識能力を高めることも報告されています。これらの研究は、オキシトシンは子宮を収縮させるという原始的な役割にとどまらず、生活している環境、社会の中で必要と捉えられる情報が強く脳に刺激を与えるのを助ける働きを明らかにしたということと言えます。また2013年にはマウスが過去の思い出の環境に戻りたがる行動を引き起こしたのは、セロトニンと一緒に働いて報酬に反応しないように脳神経の興奮を抑えたことにあることを明らかにしています。
Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 9より引用
<やさしさのタネというネタ②に続く>